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GLOB(7) Linux Programmer's Manual GLOB(7)

名前

glob - パス名を glob する

説明

昔々 UNIX V6 では、ワイルドカードパターンを展開する /etc/glob と言うプログラムがあった。その後すぐに、 この機能はシェルに組み込まれるようになった。
 
今日では、この機能をユーザープログラムからも実行できるよう、 glob(3) というライブラリルーチンも存在している。
 
glob の規則を以下に述べる (POSIX.2 3.13)。

ワイルドカードマッチ

文字列に '?', '*', '[' が含まれていると、 それはワイルドカードパターンとみなされる。 「glob する」というのは、ワイルドカードパターンを展開して、 そのパターンにマッチするパス名のリストを得ることである。 マッチは以下のように定義される。
 
(ブラケット外部の) '?' はあらゆる単一の文字にマッチする。
 
(ブラケット外部の) '*' はあらゆる文字列にマッチする。 空文字列 (empty string) にもマッチする。
文字クラス (character class)
 
" [...]" と言う表記は、先頭の '[' に続く最初の文字が '!' で なければ、ブラケットの中に含まれている文字のどれか一つにマッチする。 ブラケットの内部に含まれる文字列は空であってはならない。 したがって ']' も最初の文字に指定すればブラケットの内部に含めることが できる (つまり " [][!]" は '[', ']', '!' の 3 文字のどれかにマッチする)。
領域指定 (range)
 
特殊な表記法が一つ存在する。'-' を挟む二つの文字は領域指定となる。 (つまり " [A-Fa-f0-9]" は " [ABCDEFabcdef0123456789]" と等価となる。) '-' 文字そのものを入れたい場合は、 ブラケットの先頭または最後の文字に指定すればよい。 (つまり " []-]" は二つの文字 ']' と '-' にマッチし、" [--0]" は '-', '.', '0' の 3 文字にマッチする。この間の '/' にはマッチしない。後述を参照。)
補集合 (complementation)
 
" [!...]" と言う表記は、ブラケットの内部に含まれない単一の文字にマッチする (ただし先頭にある '!' は除外)。 (つまり " [!]a-]" は ']', 'a', '-' 以外のすべての文字の、どれか一つにマッチする。)
 
バックスラッシュ '\' を前置すれば、 '?', '*', '[' は通常の文字として扱われる。 またはシェルのコマンドラインの一部に指定する場合は、 クォートで囲っても同じ効果が得られる。ブラケットの内部では、 これらの文字はその文字自身だけを意味する。 すなわち " [[?*\]" は '[', '?', '*', '\' のどれか一文字にマッチする。

パス名 (pathname)

glob 動作は、パス名のそれぞれの部分に独立に適用される。 パス名に存在する '/' は '?' や '*' ワイルドカードにはマッチしない。 また " [.-0]" のような領域指定にもマッチしない。 領域指定は陽に '/' 文字を含むことはできない。これは文法エラーとなる。
 
'.' で始まるパス名では、この文字は陽にマッチさせなければならない。 (つまり rm * は .profile を削除しない。また tar c * ではすべてのファイルはアーカイブされない。 tar c . の方が良い。)

空のリスト

先に与えた、わかりやすく簡単なルール、 「ワイルドカードパターンをマッチしたパス名のリストに展開する」と言うのは、 オリジナルの UNIX における定義であった。 これはパターンが空のリストに展開されることも許可されていた。 例えば
 
    xv -wait 0 *.gif *.jpg
において、*.gif ファイルが全くない場合でも、 これは空のリストに展開されるため、エラーにならない。 しかし POSIX では、文法的に正しくないパターンや、 マッチがなかったパターンは、 そのまま変更されずに残されることになっている。 bash では allow_null_glob_expansion=true を指定することで、以前の振る舞いに設定することができる。
 
(同様の問題は別のところでも起こっている。例えば、古いスクリプトにおける
 
    rm `find . -name "*~"`
のような記述は、新しいスクリプトでは
 
    rm -f nosuchfile `find . -name "*~"`
のようにしなければならない。さもないと rm を引き数リストなしで呼び出す可能性があり、 エラーメッセージが出てしまう。)

注意

正規表現

ワイルドカードパターンは正規表現と多少似ているが、しかしこの両者は異なる。 まず第一に、前者がファイル名にマッチするのに対して、 後者はテキストにマッチする。第二に、ルールも同じではない。 例えば正規表現における '*' は、 前置された文字の 0 以上の繰り返しを表す。
 
正規表現にもブラケット表現はあるが、否定は '^' でなされる。 POSIX ではワイルドカードパターンにおける " [^...]" を未定義であるとしている。

文字クラスと国際化

領域指定は、もともとはもちろん ASCII における順序並びを意味していた。 したがって " [ -%]" は " [ !"#$%]" の意味であり、 " [a-z]" は「すべての小文字」の意味であった。 UNIX の実装の中には、これを拡張したものが存在し、 そこでは X-Y という領域指定は、X のコードと Y のコードに挟まれたコードを持つ文字すべてを表すようになっていた。 しかし、これにはユーザーがローカルなシステムにおける 文字コードを知らなければならず、 さらにローカルなアルファベットに対する照合順序 (collating sequence) が文字コードの順序と異なっている場合には不便であった。 (訳注: collating sequence に関しては regex(7) を参照して下さい。) したがって POSIX では、ワイルドカードパターンと正規表現の双方において、 ブラケット表記を大幅に拡張している。 これまで我々は、ブラケット表記には三つの要素が含まれうることを見てきた。 すなわち (i) 否定、(ii) 単一の文字、(iii) 領域指定、の三つである。 POSIX では、領域指定をより国際化に便利なように定義しており、 また三つのタイプをブラケット表記の要素として追加している。
 
(iii) 領域指定 X-Y は X と Y に挟まれた (両端含む) すべての文字を意味する。 このとき、カレントロケール (current locale) の LC_COLLATE カテゴリで定義されている照合順序が用いられる。
 
(iv) 名前付き文字クラス: 以下のようなものである。
[:alnum:] [:alpha:] [:blank:] [:cntrl:] [:digit:] [:graph:] [:lower:] [:print:] [:punct:] [:space:] [:upper:] [:xdigit:]
これを用いれば " [a-z]" の代わりに " [[:lower:]]" のような指定ができる。 またデンマークのように、アルファベットの 'z' 以降に 3 つの文字が存在するような場合でも、同じような動作が期待できる。 これらの文字クラスはカレントロケールの LC_CTYPE カテゴリで定義されている。
 
(v) 照合順序におけるシンボル: " [.ch.]" や "[.a-acute.]" のように " [." と ".]" で挟まれた文字列は、カレントロケールで定義された照合順序の要素となる。 ある一つの要素が複数の文字からなる場合もありうることに注意。
 
(vi) 等価クラス表現 (equivalence class expressions): " [=a=]" のように " [=" と "=]" とで挟まれた文字列であり、 カレントロケールで定義された等価クラスのメンバーである照合要素のいずれかを表す。 例えば、" [[=a=]]" は "[aáàäâ]" (注意: これは Latin-1 表記)、つまり " [a[.a-acute.][.a-grave.][.a-umlaut.][.a-circumflex.]]" と等価になる。

関連項目

sh(1), fnmatch(3), glob(3), locale(7), regex(7)

この文書について

この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 3.41 の一部 である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は http://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。
2003-08-24 Linux