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Perhaps relocate discussion of /proc/sys/fs/suid_dumpable .\" and PR_SET_DUMPABLE to this page? プロセスが実行している set\-user\-ID (set\-group\-ID) プログラムの所有者の ユーザ (グループ) が、プロセスの実 UID (実 GID) と異なる場合 (但し、 \fBprctl\fP(2) \fBPR_SET_DUMPABLE\fP 操作の説明と、 \fBproc\fP(5) の \fI/proc/sys/fs/suid_dumpable\fP ファイルの説明も参照のこと)。 .SS コアダンプファイルの名前 デフォルトでは、コアダンプファイルの名前は \fIcore\fP となるが、コアダンプファイルの名前を決めるのに使われるテンプレートを \fI/proc/sys/kernel/core_pattern\fP ファイルに定義することで、ファイル名を変更することができる (\fI/proc/sys/kernel/core_pattern\fP は Linux 2.6 および 2.4.21 以降で利用できる)。 テンプレートには % 指示子 (specifier) を入れることができる。 これはコアファイルが生成される際に、以下の値に置き換えられる。 .PP .RS 4 .PD 0 .TP 4 %% 1 つの % 文字 .TP %p ダンプされたプロセスのプロセスID (PID) .TP %u ダンプされたプロセスの実ユーザ ID (real UID) .TP %g ダンプされたプロセスの実グループ ID (real GID) .TP %s ダンプを引き起こしたシグナルの番号 .TP %t ダンプ時刻、紀元 (Epoch; 1970\-01\-01 00:00:00 +0000 (UTC)) からの秒数。 .TP %h ホスト名 (\fBuname\fP(2) で返される \fInodename\fP と同じ) .TP %e 実行ファイル名 (パス名のプレフィックスは含まれない) .TP %E 実行ファイルのパス名。スラッシュ (\(aq/\(aq) は感嘆符 (\(aq!\(aq) に置き換えられる。 .TP %c クラッシュしたプロセスのコアファイルのサイズに関するソフトリソース上限 (Linux 2.6.24 以降) .PD .RE .PP テンプレートの末尾に 1 個だけ % がある場合、 その % はコアファイル名には含められない。また、上で列挙されて いない % と文字の組み合わせがあった場合も同様である。 テンプレートにおける他の文字は、 コアファイル名としてそのまま使われる。 テンプレートには \(aq/\(aq 文字を入れることができ、 ディレクトリ名の区切り文字と解釈される。 結果として生成されるコアファイル名の最大サイズは 128 バイトである (2.6.19 より前のカーネルでは 64 バイト)。 このファイルのデフォルト値は "core" である。 以前のものとの互換性のため、 \fI/proc/sys/kernel/core_pattern\fP に "%p" が含まれず、 かつ \fI/proc/sys/kernel/core_uses_pid\fP (下記参照) が 0 でない場合は、.PID がコアファイル名に追加される。 バージョン 2.4 以降の Linux では コアダンプファイルの名前を制御する原始的な方法も提供されている。 \fI/proc/sys/kernel/core_uses_pid\fP ファイルに値 0 が書かれている場合、コアダンプファイルは単純に \fIcore\fP という名前になる。このファイルに 0 以外の値が書かれている場合、 コアダンプファイルは \fIcore.PID\fP という形式の名前になり、ファイル名にプロセス ID が含まれる。 .SS コアダンプのプログラムへのパイプ カーネル 2.6.19 以降では、Linux は \fI/proc/sys/kernel/core_pattern\fP ファイルの別の構文をサポートしている。 このファイルの最初の文字がパイプ記号 (\fB|\fP) であれば、 その行の残りの部分は実行するプログラムとして解釈される。 コアダンプは、ディスク上のファイルに書き込まれるのではなく、 プログラムの標準入力として渡される。 以下の点に注意すること。 .IP * 3 プログラムは絶対パス名 (もしくはルートディレクトリ \fI/\fP からの 相対パス名) で指定されなければならない。 また、'|' 文字の直後から始めなければならない。 .IP * プログラムを実行するために生成されるプロセスは、 ユーザ、グループとも \fIroot\fP として実行される。 .IP * コマンドライン引き数をプログラムに与えることができ (カーネル 2.6.24 以降)、 引き数はホワイトスペースで区切る (1行の最大長は 128 バイトが上限である)。 .IP * コマンドライン引き数には、上記のリストにある % 指示子を含めることができる。 例えば、ダンプされるプロセスの PID を渡すには、 引き数に \fI%p\fP を指定する。 .SS どのマッピングをコアダンプに書き込むかを制御する カーネル 2.6.23 以降では、Linux 固有のファイル \fI/proc/PID/coredump_filter\fP を使って、対応するプロセス ID を持つプロセスに対してコアダンプが行われる 際に、どのメモリセグメントをコアダンプファイルに書き込むかを制御できる。 このファイルの値はメモリマッピング種別 (\fBmmap\fP(2) 参照) のビットマスクである。 マスク内のあるビットがセットされると、そのビットに対応する種別の メモリマッピングがダンプされる。セットされていないものはダンプされない。 このファイルの各ビットは以下の意味を持つ。 .PP .PD 0 .RS 4 .TP bit 0 無名のプライベートマッピング (anonymous private mappings) をダンプする。 .TP bit 1 無名の共有マッピング (anonymous shared mappings) をダンプする。 .TP bit 2 ファイルと関連付けられたプライベートマッピング (file\-backed private mappings) をダンプする。 .TP bit 3 .\" file-backed shared mappings of course also update the underlying .\" mapped file. ファイルと関連付けられた共有マッピング (file\-backed shared mappings) をダンプする。 .TP bit 4 (Linux 2.6.24 以降) ELF ヘッダをダンプする。 .TP bit 5 (Linux 2.6.28 以降) プライベートなヒュージページ (private huge page) をダンプする。 .TP bit 6 (Linux 2.6.28 以降) 共有されたヒュージページ (shared huge page) をダンプする。 .RE .PD .PP デフォルトでは、ビット 0, 1, 4, 5 がセットされる。 (ビット 4 がセットされるのは、カーネルが設定オプション \fBCONFIG_CORE_DUMP_DEFAULT_ELF_HEADERS\fP を有効にして作成された場合である)。 このファイルの値は 16 進形式で表示される (したがって、デフォルト値は 33 と表示される)。 \fIcoredump_filter\fP の値に関わらず、フレームバッファなどの memory\-mapped I/O に関する ページは決してダンプされず、仮想 DSO ページは常にダンプされる。 \fBfork\fP(2) で作成される子プロセスは親プロセスの \fIcoredump_filter\fP の値を継承する。 \fBexecve\fP(2) の前後で \fIcoredump_filter\fP の値は保持される。 例のように、プログラムを実行する前に親シェルの \fIcoredump_filter\fP を設定しておくと役立つことがある。 .in +4n .nf $\fB echo 0x7 > /proc/self/coredump_filter\fP $\fB ./some_program\fP .fi .in .PP このファイルが提供されるのは、カーネルが設定オプション \fBCONFIG_ELF_CORE\fP を有効にして作成された場合だけである。 .SH 注意 \fBgdb\fP(1) の \fIgcore\fP コマンドを使用すると、実行中のプロセスのコアダンプを取得できる。 .\" Always including the PID in the name of the core file made .\" sense for LinuxThreads, where each thread had a unique PID, .\" but doesn't seem to serve any purpose with NPTL, where all the .\" threads in a process share the same PID (as POSIX.1 requires). .\" Probably the behavior is maintained so that applications using .\" LinuxThreads continue appending the PID (the kernel has no easy .\" way of telling which threading implementation the userspace .\" application is using). -- mtk, April 2006 マルチスレッドプロセス (より正確には、 \fBclone\fP(2) の \fBCLONE_VM\fP で生成された別プロセスとメモリを共有しているプロセス) がコアダンプを生成する場合、 コアファイル名にプロセス ID が必ず付加される。 ただし、 \fI/proc/sys/kernel/core_pattern\fP の %p 指定によりコアファイル名のどこか他の場所にプロセス ID が すでに含まれている場合は、プロセス ID が末尾に付加されない。 (この機能がまず役に立つのは LinuxThreads 実装を利用している場合である。 LinuxThreads 実装では、プロセス内の個々のスレッドは異なるプロセス ID を持つ。) .SH 例 以下のプログラムは \fI/proc/sys/kernel/core_pattern\fP ファイルのパイプ構文の使用例を示している。 以下のシェルのセッションはこのプログラムの使用例を示すものである (コンパイルして \fIcore_pattern_pipe_test\fP という名前の実行ファイルを作成している)。 .PP .in +4n .nf $\fB cc \-o core_pattern_pipe_test core_pattern_pipe_test.c\fP $\fB su\fP Password: #\fB echo "|$PWD/core_pattern_pipe_test %p UID=%u GID=%g sig=%s" > \e\fP \fB/proc/sys/kernel/core_pattern\fP #\fB exit\fP $\fB sleep 100\fP \fB^\e\fP # type control\-backslash Quit (core dumped) $\fB cat core.info\fP argc=5 argc[0]= argc[1]=<20575> argc[2]= argc[3]= argc[4]= Total bytes in core dump: 282624 .fi .in .SS プログラムのソース \& .nf /* core_pattern_pipe_test.c */ #define _GNU_SOURCE #include #include #include #include #include #include #define BUF_SIZE 1024 int main(int argc, char *argv[]) { int tot, j; ssize_t nread; char buf[BUF_SIZE]; FILE *fp; char cwd[PATH_MAX]; /* Change our current working directory to that of the crashing process */ snprintf(cwd, PATH_MAX, "/proc/%s/cwd", argv[1]); chdir(cwd); /* Write output to file "core.info" in that directory */ fp = fopen("core.info", "w+"); if (fp == NULL) exit(EXIT_FAILURE); /* Display command\-line arguments given to core_pattern pipe program */ fprintf(fp, "argc=%d\en", argc); for (j = 0; j < argc; j++) fprintf(fp, "argc[%d]=<%s>\en", j, argv[j]); /* Count bytes in standard input (the core dump) */ tot = 0; while ((nread = read(STDIN_FILENO, buf, BUF_SIZE)) > 0) tot += nread; fprintf(fp, "Total bytes in core dump: %d\en", tot); exit(EXIT_SUCCESS); } .fi .SH 関連項目 \fBbash\fP(1), \fBgdb\fP(1), \fBgetrlimit\fP(2), \fBmmap\fP(2), \fBprctl\fP(2), \fBsigaction\fP(2), \fBelf\fP(5), \fBproc\fP(5), \fBpthreads\fP(7), \fBsignal\fP(7) .SH この文書について この man ページは Linux \fIman\-pages\fP プロジェクトのリリース 3.41 の一部 である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は http://www.kernel.org/doc/man\-pages/ に書かれている。