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CRYPT(3) Linux Programmer's Manual CRYPT(3)

名前

crypt, crypt_r - パスワードとデータの暗号化

書式

#define _XOPEN_SOURCE       /* feature_test_macros(7) 参照 */

#include <unistd.h> char *crypt(const char *key, const char *salt); #define _GNU_SOURCE /* See feature_test_macros(7) */
#include <crypt.h> char *crypt_r(const char *key, const char *salt, struct crypt_data *data);

-lcrypt でリンクする。

説明

crypt() はパスワード暗号化関数である。 鍵探索のハードウェアによる実装を妨げるように(その他にもいろいろ) 変更した Data Encryption Standard アルゴリズムを元にしている。

key はユーザーが入力するパスワードである。

salt は集合 [a-zA-Z0-9./] から選ばれた 2 文字の文字列である。 この文字列はアルゴリズムの出力を 4096 通りにかき乱すのに使われる。

key の最初の 8 文字の各文字から下位 7 ビットをとって 56 ビットの鍵が得られる。 この 56 ビットの鍵は特定の文字列(ふつうはすべて 0 の文字列) を繰り返し暗号化するのに用いられる。 返り値は暗号化されたパスワードへのポインターで、13 の印字可能な ASCII 文字 からなる(最初の 2 文字は salt そのもの)。 返り値は、関数呼出しのたびに上書きされる静的なデータへのポインターである。

警告: 鍵空間は 2**56 = 7.2e16 の可能な値から成る。 この鍵空間の全探索は強力な並列計算機を使えば可能である。また crack(1) のようなソフトウェアはこの鍵空間の中で、多くの人にパスワードとして 使われるような鍵についての全探索が可能である。 それゆえ、パスワードを選択するときには、すくなくとも、 一般的に使われる単語と名前は避けるべきである。 passwd(1) を使う時にはクラックされうるパスワードについての検査をすることが 推奨される。

DES アルゴリズムにはいくつかの癖があり、それによってパスワード認証以外に crypt() を使うのはたいへんよくない選択となっている。もし crypt() を暗号プロジェクトに使おうという案をもっているならば、それはやめたほうが よい。暗号化についてのよい本と誰でも入手できる DES ライブラリのひとつを 手にいれるべきだ。

crypt_r() は crypt() の再入可能版である。 data で示される構造体は結果データの保存と情報の管理に使われる。 この構造体に対して(メモリーを割り当てること以外に)呼び出し元がするべき唯一の ことは、 crypt_r() の初回の呼び出しの前に data->initialized をゼロにすることだけである。

返り値

成功の場合には、暗号化されたパスワードへのポインターが返される。 エラーの場合には NULL が返される。

エラー

salt が間違ったフォーマットである。
crypt() 関数が実装されていない。多分アメリカの輸出規制のために。
/proc/sys/crypto/fips_enabled が 0 でない値で、 DES などの弱い暗号タイプを利用しようとした。

属性

マルチスレッディング (pthreads(7) 参照)

crypt() 関数はスレッドセーフではない。

crypt_r() 関数はスレッドセーフである。

準拠

crypt(): SVr4, 4.3BSD, POSIX.1-2001. crypt_r() は GNU 拡張である。

注意

glibc での注意

この関数の glibc2 版は追加の暗号化アルゴリズムに対応している。

もし salt の文字列が "$id$" で始まっていて、"$" で終わっている文字列が 続いている場合:

$id$salt$encrypted

DES を使う代わりに、 id で使用する暗号化手法を識別し、これがパスワード文字列の残りの部分を解釈する 方法を決定する。 id の値として、以下の値に対応している:
ID | Method
1 | MD5
2a | Blowfish (本流の glibc には入っていない;
| いくつかの Linux ディストリビューションで追加されている)
5 | SHA-256 (glibc 2.7 以降)
6 | SHA-512 (glibc 2.7 以降)

従って、$5$salt$encrypted は SHA-256 でエンコードされた パスワードであり、$6$salt$encrypted は SHA-512 で エンコードされたパスワードである。

"salt" は salt における "$id$" に引き続く 16 文字以下の 文字列である。 パスワード文字列の暗号化部分は実際に計算されたパスワードである。 この文字列のサイズは固定である:

MD5 | 22 characters
SHA-256 | 43 characters
SHA-512 | 86 characters

"salt" と "encrypted" の文字は [a-zA-Z0-9./] の集合から 選ばれる。 MD5 と SHA の実装では、 key 全体が意味がある (DES の場合には最初の 8 文字だけに意味がある)。

関連項目

login(1), passwd(1), encrypt(3), getpass(3), passwd(5)

この文書について

この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 3.79 の一部 である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は http://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。

2014-02-26