.\" Copyright (c) 2008, Linux Foundation, written by Michael Kerrisk .\" .\" .\" %%%LICENSE_START(VERBATIM) .\" Permission is granted to make and distribute verbatim copies of this .\" manual provided the copyright notice and this permission notice are .\" preserved on all copies. .\" .\" Permission is granted to copy and distribute modified versions of this .\" manual under the conditions for verbatim copying, provided that the .\" entire resulting derived work is distributed under the terms of a .\" permission notice identical to this one. .\" .\" Since the Linux kernel and libraries are constantly changing, this .\" manual page may be incorrect or out-of-date. The author(s) assume no .\" responsibility for errors or omissions, or for damages resulting from .\" the use of the information contained herein. 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C99 と POSIX.1\-2001 で規定されている \fImath_errhandling\fP 識別子は glibc ではサポートされていない。 この識別子は、2 つのエラー通知機構 (\fIerrno\fP と \fBfetestexcept\fP(3) 経由で取得できる例外) のうちどちらが使用されているかを通知 することになっている。 標準では、少なくとも一つは使用されることが要求されているが、 両方とも利用可能であってもよいとされている。 glibc での現在の (バージョン 2.8 での) 状況はかなり混乱している。 ほとんどの関数 (ただし全部ではない) はエラー時に例外を上げる。 いくつかの関数は \fIerrno\fP も設定する。 \fIerrno\fP を設定するが、例外を上げない関数も少しだけ存在する。 どちらも行わない関数もごく少数だが存在する。 詳細については個々のマニュアルページを参照のこと。 .\" http://www.securecoding.cert.org/confluence/display/seccode/FLP32-C.+Prevent+or+detect+domain+and+range+errors+in+math+functions \fIerrno\fP と \fBfetestexcept\fP(3) の両方を使ってエラーチェックを行うことで複雑になるのを避けるため、 多くの場合、関数呼び出しを行う前に不正な引き数かのチェックを行う 方法が推奨されている。 例えば、以下のコードは、 \fBlog\fP(3) の引き数が NaN でも (極エラーとなる) 0 でも (領域エラーとなる) 0 未満 でもないことを保証するものである。 .in +4n .nf double x, r; if (isnan(x) || islessequal(x, 0)) { /* Deal with NaN / pole error / domain error */ } r = log(x); .fi .in このページに書かれていることは、 (\fI\fP で宣言されている) 複素数関数にはあてはまらない。 一般に、C99 や POSIX.1\-2001 ではこれらの関数がエラーを返すことを 要求してない。 \fBgcc\fP(1) の \fI\-fno\-math\-errno\fP オプションを使うと、実行ファイルで、標準の実装よりも高速な数学関数の 実装が使用されるようになるが、 エラー時に \fIerrno\fP が設定されない (\fBgcc\fP(1) の \fI\-ffast\-math\fP オプションを指定した場合にも \fI\-fno\-math\-errno\fP は有効になる)。 このオプションを指定した場合でも、 \fBfetestexcept\fP(3) を使ったエラーの検査は可能である。 .SH 関連項目 \fBgcc\fP(1), \fBerrno\fP(3), \fBfenv\fP(3), \fBfpclassify\fP(3), \fBINFINITY\fP(3), \fBisgreater\fP(3), \fBmatherr\fP(3), \fBnan\fP(3) \fIinfo libc\fP .SH この文書について この man ページは Linux \fIman\-pages\fP プロジェクトのリリース 3.79 の一部 である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は http://www.kernel.org/doc/man\-pages/ に書かれている。