.\" Copyright (C) 2008 Michael Kerrisk .\" starting from a version by Davide Libenzi .\" .\" %%%LICENSE_START(GPLv2+_SW_3_PARA) .\" This program is free software; you can redistribute it and/or modify .\" it under the terms of the GNU General Public License as published by .\" the Free Software Foundation; either version 2 of the License, or .\" (at your option) any later version. .\" .\" This program is distributed in the hope that it will be useful, .\" but WITHOUT ANY WARRANTY; without even the implied warranty of .\" MERCHANTABILITY or FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE. See the .\" GNU General Public License for more details. .\" .\" You should have received a copy of the GNU General Public .\" License along with this manual; if not, see .\" . .\" %%%LICENSE_END .\" .\"******************************************************************* .\" .\" This file was generated with po4a. 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/* シグナル番号 */ int32_t ssi_errno; /* エラー番号 (未使用) */ int32_t ssi_code; /* シグナルコード */ uint32_t ssi_pid; /* 送信元の PID */ uint32_t ssi_uid; /* 送信元の実 UID */ int32_t ssi_fd; /* ファイルディスクリプタ (SIGIO) */ uint32_t ssi_tid; /* カーネルタイマ ID (POSIX タイマ) uint32_t ssi_band; /* Band イベント (SIGIO) */ uint32_t ssi_overrun; /* POSIX タイマのオーバーラン回数 */ uint32_t ssi_trapno; /* シグナルの原因となったトラップ番号 */ int32_t ssi_status; /* 終了ステータスかシグナル (SIGCHLD) */ int32_t ssi_int; /* sigqueue(3) から送られた整数 */ uint64_t ssi_ptr; /* sigqueue(3) から送られたポインタ */ uint64_t ssi_utime; /* 消費したユーザ CPU 時間 (SIGCHLD) */ uint64_t ssi_stime; /* 消費したシステム CPU 時間 (SIGCHLD) */ uint64_t ssi_addr; /* シグナルを生成したアドレス (ハードウェアが生成したシグナルの場合) */ uint8_t pad[\fIX\fP]; /* pad の大きさは 128 バイト (将来のフィールド追加用の場所の確保) */ }; .fi .in \fIsignalfd_siginfo\fP 構造体の各フィールドは、 \fIsiginfo_t\fP 構造体の同じような名前のフィールドと同様である。 \fIsiginfo_t\fP 構造体については \fBsigaction\fP(2) に説明がある。 返された \fIsignalfd_siginfo\fP 構造体の全てのフィールドがあるシグナルに対して有効なわけではない。 どのフィールドが有効かは、 \fIssi_code\fP フィールドで返される値から判定することができる。 このフィールドは \fIsiginfo_t\fP の \fIsi_code\fP フィールドと同様である。詳細は \fBsigaction\fP(2) を参照。 .SS "fork(2) での扱い" \fBfork\fP(2) が行われると、子プロセスは signalfd ファイルディスクリプタのコピーを 継承する。 子プロセスでこのファイルディスクリプタから \fBread\fP(2) を行うと、子プロセスに対するキューに入っているシグナルに関する 情報が返される。 .SS "execve(2) での扱い" 他のファイルディスクリプタと全く同様に、 signalfd ファイルディスクリプタも \fBexecve\fP(2) の前後でオープンされたままとなる。但し、そのファイルディスクリプタに close\-on\-exec のマーク (\fBfcntl\fP(2) 参照) が付いている場合はクローズされる。 \fBexecve\fP(2) の前に読み出し可能となっていた全てのシグナルは新しく起動されたプログラム でも引き続き読み出し可能である (これは伝統的なシグナルの扱いと同じであり、 処理待ちのブロックされたシグナルは \fBexecve\fP(2) の前後で処理待ちのままとなる)。 .SS スレッドでの扱い マルチスレッドプログラムにおける signalfd ファイルディスクリプタの扱いは シグナルの標準的な扱いと全く同じである。 言い換えると、あるスレッドが signalfd ファイルディスクリプタから 読み出しを行うと、そのスレッド自身宛てのシグナルとプロセス (すなわち スレッドグループ全体) 宛てのシグナルが読み出される。 (スレッドは同じプロセスの他のスレッド宛てのシグナルを読み出すことはできない。) .SH 返り値 成功すると、 \fBsignalfd\fP() は signalfd ファイルディスクリプタを返す。 返されるファイルディスクリプタは、 \fIfd\fP が \-1 の場合は新規のファイルディスクリプタであり、 \fIfd\fP が有効な signalfd ファイルディスクリプタだった場合は \fIfd\fP 自身である。 エラーの場合、\-1 を返し、 \fIerrno\fP にエラーを示す値を設定する。 .SH エラー .TP \fBEBADF\fP ファイルディスクリプタ \fIfd\fP が有効なファイルディスクリプタでない。 .TP \fBEINVAL\fP .\" or, the .\" .I sizemask .\" argument is not equal to .\" .IR sizeof(sigset_t) ; \fIfd\fP が有効な signalfd ファイルディスクリプタではない。 .TP \fBEINVAL\fP \fIflags\fP が無効である。もしくは、Linux 2.6.26 以前の場合には \fIflags\fP が 0 以外である。 .TP \fBEMFILE\fP オープン済みのファイルディスクリプタの数がプロセスあたりの上限に 達していた。 .TP \fBENFILE\fP オープン済みのファイル総数がシステム全体の上限に達していた。 .TP \fBENODEV\fP (カーネル内の) 無名 inode デバイスをマウントできなかった。 .TP \fBENOMEM\fP 新しい signalfd ファイルディスクリプタを生成するのに十分なメモリがなかった。 .SH バージョン .\" signalfd() is in glibc 2.7, but reportedly does not build \fBsignalfd\fP() はカーネル 2.6.22 以降の Linux で利用可能である。 正しく動作する glibc 側のサポートはバージョン 2.8 以降で提供されている。 \fBsignalfd4\fP() システムコール (「注意」参照) は カーネル 2.6.27 以降の Linux で利用可能である。 .SH 準拠 \fBsignalfd\fP() と \fBsignalfd4\fP() は Linux 固有である。 .SH 注意 実際の Linux のシステムコールでは \fIsize_t sizemask\fP という引き数が追加で必要である。この引き数で \fImask\fP のサイズを指定する。 glibc の \fBsignalfd\fP() ラッパー関数にはこの引き数は含まれず、 ラッパー関数が必要な値を計算して内部で呼び出すシステムコールに提供する。 一つのプロセスは複数の signalfd ファイルディスクリプタを生成することができる。 これにより、異なるファイルディスクリプタで異なるシグナルを受け取ることが できる (この機能は \fBselect\fP(2), \fBpoll\fP(2), \fBepoll\fP(7) を使ってファイルディスクリプタを監視する場合に有用かもしれない。 異なるシグナルが到着すると、異なるファイルディスクリプタが利用可能に なるからだ)。 一つのシグナルが二つ以上のファイルディスクリプタの \fImask\fP に含まれている場合、そのシグナルの発生はそのシグナルを \fImask\fP に含むファイルディスクリプタのうちいずれか一つから読み出すことができる。 .SS "下層にある Linux のシステムコール" 下層にある Linux システムコールは二種類あり、 \fBsignalfd\fP() と、もっと新しい \fBsignalfd4\fP() である。 \fBsignalfd\fP() は \fIflags\fP 引き数を実装していない。 \fBsignalfd4\fP() では上記の値の \fIflags\fP が実装されている。 glibc 2.9 以降では、 \fBsignalfd\fP() のラッパー関数は、 \fBsignalfd4\fP() が利用可能であれば、これを使用する。 .SH バグ .\" The fix also was put into 2.6.24.5 カーネル 2.6.25 より前では、 \fBsigqueue\fP(3) により送信されたシグナルと一緒に渡されるデータでは、フィールド \fIssi_ptr\fP と \fIssi_int\fP は設定されない。 .SH 例 下記のプログラムは、シグナル \fBSIGINT\fP と \fBSIGQUIT\fP を signalfd ファイルディスクリプタ経由で受信する。 シグナル \fBSIGQUIT\fP 受信後にプログラムは終了する。 以下に示すシェルセッションにこのプログラムの使い方を示す。 .in +4n .nf $\fB ./signalfd_demo\fP \fB^C\fP # Control\-C generates SIGINT Got SIGINT \fB^C\fP Got SIGINT \fB^\e\fP # Control\-\e generates SIGQUIT Got SIGQUIT $ .fi .in .SS プログラムのソース \& .nf #include #include #include #include #include #define handle_error(msg) \e do { perror(msg); exit(EXIT_FAILURE); } while (0) int main(int argc, char *argv[]) { sigset_t mask; int sfd; struct signalfd_siginfo fdsi; ssize_t s; sigemptyset(&mask); sigaddset(&mask, SIGINT); sigaddset(&mask, SIGQUIT); /* Block signals so that they aren\(aqt handled according to their default dispositions */ if (sigprocmask(SIG_BLOCK, &mask, NULL) == \-1) handle_error("sigprocmask"); sfd = signalfd(\-1, &mask, 0); if (sfd == \-1) handle_error("signalfd"); for (;;) { s = read(sfd, &fdsi, sizeof(struct signalfd_siginfo)); if (s != sizeof(struct signalfd_siginfo)) handle_error("read"); if (fdsi.ssi_signo == SIGINT) { printf("Got SIGINT\en"); } else if (fdsi.ssi_signo == SIGQUIT) { printf("Got SIGQUIT\en"); exit(EXIT_SUCCESS); } else { printf("Read unexpected signal\en"); } } } .fi .SH 関連項目 \fBeventfd\fP(2), \fBpoll\fP(2), \fBread\fP(2), \fBselect\fP(2), \fBsigaction\fP(2), \fBsigprocmask\fP(2), \fBsigwaitinfo\fP(2), \fBtimerfd_create\fP(2), \fBsigsetops\fP(3), \fBsigwait\fP(3), \fBepoll\fP(7), \fBsignal\fP(7) .SH この文書について この man ページは Linux \fIman\-pages\fP プロジェクトのリリース 3.65 の一部である。 プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は \%http://www.kernel.org/doc/man\-pages/ に書かれている。