.\" Copyright (C) Michael Kerrisk, 2004 .\" using some material drawn from earlier man pages .\" written by Thomas Kuhn, Copyright 1996 .\" .\" %%%LICENSE_START(GPLv2+_DOC_FULL) .\" This is free documentation; you can redistribute it and/or .\" modify it under the terms of the GNU General Public License as .\" published by the Free Software Foundation; either version 2 of .\" the License, or (at your option) any later version. .\" .\" The GNU General Public License's references to "object code" .\" and "executables" are to be interpreted as the output of any .\" document formatting or typesetting system, including .\" intermediate and printed output. .\" .\" This manual is distributed in the hope that it will be useful, .\" but WITHOUT ANY WARRANTY; without even the implied warranty of .\" MERCHANTABILITY or FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE. 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Thus, suppose we allocate .\" (num_physpages / 4 + 1) of memory, and lock those pages once using .\" mlock(), and then lock the *same* page range a second time. .\" In the case, the second mlock() call will fail, since the check .\" calculates that the process is trying to lock (num_physpages / 2 + 2) .\" pages, which of course is not true. (MTK, Nov 04, kernel 2.4.28) (Linux 2.4 以前) 呼び出し元プロセスが RAM の半分以上をロックしようとした。 .TP \fBEPERM\fP .\"SVr4 documents an additional EAGAIN error code. 呼び出し側が特権を持っていないが、 要求された操作を実行するには特権 (\fBCAP_IPC_LOCK\fP) が必要である。 .LP \fBmlock\fP() と \fBmunlock\fP() 用として: .TP \fBEAGAIN\fP 指定されたアドレス範囲の一部または全てをロックすることができなかった。 .TP \fBEINVAL\fP \fIstart\fP+\fIlen\fP の加算の結果が \fIstart\fP よりも小さかった (例えば、加算でオーバーフローが発生したなど)。 .TP \fBEINVAL\fP (Linux ではこの意味で使われない) \fIaddr\fP がページサイズの倍数ではない。 .TP \fBENOMEM\fP 指定されたアドレス範囲がプロセスのアドレス空間にマップされたページと 一致しない。 .LP \fBmlockall\fP() 用として: .TP \fBEINVAL\fP 未知の \fIflags\fP が指定された。 .LP \fBmunlockall\fP() 用として: .TP \fBEPERM\fP (Linux 2.6.8 以前) 呼び出し元が権限 (\fBCAP_IPC_LOCK\fP) を持っていない。 .SH 準拠 POSIX.1\-2001, SVr4. .SH 可用性 \fBmlock\fP() と \fBmunlock\fP() が使用可能な POSIX システムでは \fB_POSIX_MEMLOCK_RANGE\fP が \fI\fP で定義されている。 また、ページあたりのバイト数は、 \fI\fP で定義される定数 \fBPAGESIZE\fP から (定義されている場合)、もしくは \fIsysconf(_SC_PAGESIZE)\fP を呼び出すことで決定できる。 .\" POSIX.1-2001: It shall be defined to -1 or 0 or 200112L. .\" -1: unavailable, 0: ask using sysconf(). .\" glibc defines it to 1. \fBmlockall\fP() と \fBmunlockall\fP() が利用可能な POSIX システムでは、 \fB_POSIX_MEMLOCK\fP は \fI\fP で 0 より大きい値に定義されている (\fBsysconf\fP(3) も参照のこと)。 .SH 注意 メモリーのロックの用途としては主に二つある: リアルタイム アルゴリズムと高いセキュリティの必要なデータ処理である。リアルタイムの アプリケーションは決定的なタイミングやスケジューリングを必要とするが、 ページングは予期しないプログラムの実行遅延をもたらす主要な要因となる。 リアルタイムのアプリケーションはたいていは \fBsched_setscheduler\fP(2) でリアルタイムスケジューラに変更される。 暗号やセキュリティのソフトウェアはしばしばパスワードや秘密鍵のデータの ような重要なバイト列を扱う。ページングの結果、これらの秘密が スワップ用の固定媒体に転送されるかもしれない。そして、セキュリティ ソフトウェアが RAM 上の秘密を削除して終了したずっと後になっても、 このスワップされたデータには敵がアクセスできる可能性がある (しかし、ラップトップといくつかのデスクトップコンピュータの サスペンドモードはシステムの RAM の内容をメモリーのロックに関わらず ディスクに保存することに注意)。 リアルタイムプロセスが \fBmlockall\fP() を使ってページフォールトによる遅延を防ごうとする場合、 関数呼び出しによってページフォールトが発生しないように、 時間制限の厳しい部分 (time\-critical section) に入る前に 十分な量のロックされたスタックを確保しておく必要がある。 これを実現するには、十分な大きさの自動変数 (の配列) を確保し、 これらのスタック用のページがメモリー上に確保されるようにこの配列に 書き込みを行う関数を用意し、これを呼び出せばよい。こうすることで、 十分な量のページがスタックにマッピングされ、RAM にロックされる。 ダミーの書き込みを行うことによって、 時間制限の厳しい部分 (critical section) 内では書き込み時コピーによる ページフォールトさえも発生しないことが保証される。 メモリーロックは \fBfork\fP(2) で作成された子プロセスには継承されず、 \fBexecve\fP(2) が呼ばれたり、プロセスが終了した場合は 自動的に削除される (ロック解除される)。 \fBmlockall\fP() の \fBMCL_FUTURE\fP 設定は \fBfork\fP(2) で作成された子プロセスには継承されず、 \fBexecve\fP(2) の中でクリアされる。 あるアドレス範囲に対するメモリーロックは、そのアドレス範囲が \fBmunmap\fP(2) によってアンマップされた場合は削除される。 メモリーのロックは累積しない。 すなわち複数回 \fBmlock\fP() や \fBmlockall\fP() を呼び出してロックされたページでも、 対応する範囲に対して \fBmunlock\fP() を 1 回呼び出したり \fBmunlockall\fP() を呼び出したりするだけでロック解除される。 複数の場所や複数のプロセスにマップされているページは、少なくとも一つの場所、 一つのプロセスでロックされている限りは RAM に残り続ける。 .SS "Linux での注意" Linux では、 \fBmlock\fP() と \fBmunlock\fP() は自動的に \fIaddr\fP を端数切り捨てにより一番近いページ境界へと丸める。 しかし POSIX.1\-2001 は \fIaddr\fP がページ境界に合っていることを要求する実装も許している。 そのため移植性を意図したアプリケーションではきちんと境界に合わせた方が良い。 Linux 固有の \fI/proc/PID/status\fP ファイルの \fIVmLck\fP フィールドには、 \fBmlock\fP(), \fBmlockall\fP() および \fBmmap\fP(2) \fBMAP_LOCKED\fP を使って、 ID が \fIPID\fP のプロセスがロックしているメモリー量 (キロバイト単位) が 表示される。 .SS 制限と権限 Linux 2.6.8 以前では、メモリーをロックするためには特権 (\fBCAP_IPC_LOCK\fP) が必要で、 ソフト資源制限 \fBRLIMIT_MEMLOCK\fP はプロセスがどれだけのメモリーをロックできるかの制限を定義する。 Linux 2.6.9 以降では、特権を持つプロセスがロックできるメモリー量は無制限となり、 代わりにソフト資源制限 \fBRLIMIT_MEMLOCK\fP は特権を持たないプロセスがロックできるメモリー量の制限を定義する。 .SH バグ 2.4.17 までの 2.4 シリーズの Linux カーネルには、 \fBmlockall\fP() \fBMCL_FUTURE\fP フラグが \fBfork\fP(2) で継承されると言うバグがある。 これはカーネル 2.4.18 で修正された。 .\" See the following LKML thread: .\" http://marc.theaimsgroup.com/?l=linux-kernel&m=113801392825023&w=2 .\" "Rationale for RLIMIT_MEMLOCK" .\" 23 Jan 2006 カーネル 2.6.9 以降では、特権を持ったプロセスが \fImlockall(MCL_FUTURE)\fP を呼び出した後で、特権をなくした場合 (例えば、 実効 UID を 0 以外の値に変更するなどにより、 \fBCAP_IPC_LOCK\fP ケーパビリティを失った場合)、リソース上限 \fBRLIMIT_MEMLOCK\fP に達すると、それ以降のメモリー割り当て (例えば \fBmmap\fP(2), \fBbrk\fP(2)) は失敗する。 .SH 関連項目 \fBmmap\fP(2), \fBsetrlimit\fP(2), \fBshmctl\fP(2), \fBsysconf\fP(3), \fBproc\fP(5), \fBcapabilities\fP(7) .SH この文書について この man ページは Linux \fIman\-pages\fP プロジェクトのリリース 3.79 の一部 である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は http://www.kernel.org/doc/man\-pages/ に書かれている。